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「美しく化粧した若い女性の口の中を見ると、歯肉は赤く腫れ、多くの歯は虫歯に侵されて金属をつめたり覆せたりしてあり、口臭がする。歯槽骨(歯根を支えている骨)は溶けている。まるで腐った口の中である。」▼そんな例がある、と高崎市の歯科医、丸橋賢さんは『癒しの思想』の中で書いている。5歳の男の子でも「歯の原形が想像できないほど溶け、咬み合わせもメチャクチャで、歯肉は赤黒く腫れ、これが人間の姿とは思わない」という例がある。いまは3歳児でも、5割の子は虫歯を持っているそうだ。大人も子どもも、現代人の歯は極端に病んでいると丸橋さんは警告する▼古代人の歯はたくましい。虫歯や歯槽膿漏(のうろう)の跡もあまりない。発掘されたあごの骨を調べると、歯槽骨はちみつで、溶けた形跡がないという▼古代人と現代人の歯はなぜかくも違うのか。有力な原因の一つは食生活や生活環境にある。歯が病んでいる患者の多くは、野菜、小魚、海草、大豆製品、牛乳などを十分にとらず、砂糖をとりすぎている、という偏食の傾向がある▼偏食によって体の抵抗力が落ち、全身が病みたがっている状態になり、それが歯にも現れる、と丸橋さんは分析する。貧血症、動脈硬化、糖尿病などと歯槽膿漏はどうやら深い関係にあるらし▼この本を読みながら「長寿村」と知られる山梨県の棡原(ゆずりはら)地区の異変を思いだした。かつて棡原の人たちは、豊かな母乳で育てられ、麦めしを食べ、野菜とうどんのにこみを食べ、自家製のみそやしょうゆを自慢した▼そういう自給自足の伝統食と畑仕事が長寿の一因だといわれていた。だが、異変があった。近代化が進み、食生活が白米と肉・魚中心のものに変わるにつれて成人病がめだちはじめ、長寿の伝統にかげりがでてきたというのだ。うまいものに囲まれた、いわゆる胞食文化の中で、私たちの体は確実に退化を続けている。
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