丸橋ファミリー歯科の青木です。
今回は治療途中で歯を放置してしまったために抜かなければならなくなった例をご紹介したいと思います。
治療をスタートしたのは約2年前です。虫歯がひどく2本の歯に神経の治療(根管治療)が行われました。丁寧に根管充填され、「支台築造」という歯を補強する土台の型どりまで終わりましたが、ここで患者さんが治療を中断してしまいました。
写真がその2年後のレントゲン写真です。(黄色い矢印は私が追加)
この患者さんは非常に大きな虫歯が数本あるのですが、比較的最近急激に進行したようで、ここ最近の食生活が非常に甘いものに偏った状態であることが伺い知れました。患者さんの20代という年齢を考えると、親の管理が行き届く学生時代はあまり虫歯が無かったのに、親から離れたとたん食生活が甘い物に極端にかたより急激に虫歯が発生した、そのような状態ではないかと推察されました。
そんな甘いもの依存状態の中で治療途中の歯が放置されたのですから結果は無惨なものでした。
歯は表面が硬いエナメル質に覆われ、その下の層に比較的軟らかい象牙質があります。さらに中心には歯髄、一般的に「神経」と呼ばれる軟組織がありますが、神経の治療した歯はその神経がありませんから、中が空洞の状態で、そこに治療用の材料が充填されます。
中をくりぬいたような根管治療の状態で放置されると、虫歯はダイレクトに神経があった空間から広がってしまいます。中の象牙質はエナメル質ほど硬くないので、あっと言う間に虫歯が進行してしまいます。堅牢な城壁でもトロイの木馬に隠れた兵隊に中から攻撃されてしまえばあっという間に破壊されてしまう、それに似ています。黄色い矢印のように歯の中で虫歯が広がっています。治療することは不可能で抜歯することになりましたが、歯科医としては非常に残念です。
誰にとっても歯の治療はあまり楽しいものではありません。もちろん歯を削っていても寝てしまうようなリラックスした患者さんもいますが、ほとんどの患者さんはストレスでいっぱいだと思います。何かのきっかけで歯医者に行かなくなり、そのまま放置してしまう患者さんの心情も分からなくはありません。しかし、抜歯という最悪の結果をまねくこともありますから、どうか頑張って通院していただきたいと思います。
なお、中にはどうしも中断しなければならないこともあるかもしれません。そのような場合はどうかお気軽にそれで大丈夫かお尋ねいただきたいと思います。治療の内容、中断する期間などで対処法が異なりますから、少しでも歯が傷まないようにアドバイスさせていただきたいと思います。